恋の病に、堕ちてゆく。
おかしいね。あなたが誘拐犯でなかったら私たちは出逢わなかったのに、誘拐犯でない"青波"と出逢いたいなど矛盾している。

もっと違う出逢いを求めてしまっているけれど、私たちはもう二度と逢うことはないだろう。

顔を合わせたとしても警察署とか、悪い場面だ。

もうこんな風に楽しい場所で、一緒に、笑い合うことはないのだろう。


「私も、今日、来れて良かったです」

「そうだね。お土産でも買って行こうか」

「お金が…」

「バッグごと没収しているのはこっちだからね。好きなだけ買ってあげるよ」


今だけは、青波が犯罪者であるということを忘れて過ごしたいと思ってしまった。
< 131 / 261 >

この作品をシェア

pagetop