恋の病に、堕ちてゆく。
今は医療も薬も、万能でないことを知ってしまった。それでも日々、進歩していくと信じている。


「あの頃の妹は本当に元気がなくて、暗闇の中にいた。でも加奈ちゃんの話を聞いて、少し、希望が持てたみたいなんだ。キラキラとした目で、心からお父さんと、その研究を信じている加奈ちゃんを見て、妹は元気づけられた。なにか、すがるものが欲しかったんだと思う」

「私の言葉が、そんな…」

「妹は加奈ちゃんより3つ上で、心臓の病気だったんだ。加奈ちゃんと出逢って、前向きになれて、学校にも通えるようになった。普通の人と同じような生活を送れていたよ」

続きを聞くのが怖い。
妹さんは今も病気と闘っているのだろうか。


「本当に完治したかのように元気になったんだ。ただ3年前にーー病状が悪化して、亡くなった」

青波は静かに言った。

「妹は頑張って生き抜いたのだと思うよ」

「はい」
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