恋の病に、堕ちてゆく。
私たちの置かれた状況は普通ではありえない。
こ、こんな年上の男性に抱き締められているところを見たら、お母さんが失神しちゃうよ。

「上からの指示がない限り、加奈ちゃんを自由にすることはできないけれど、俺にできることはなんでもするよ」

「…外に出ることができて自由になってから、私のお願いを聞いてください。その時までに、とびっきりのお願いを考えておきますから」

今、私が望むことは早く家族の元に帰ることだけだ。


身体を放し、青波の手を握る。


「受け取ってくれますか?」

イルカのマスコットを手にのせると、青波は笑った。


「ありがーー」

「青波さん!」


部屋のドアが乱暴に開き、四季が乗り込んできた。
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