恋の病に、堕ちてゆく。
「でも…」

(たま)が脇腹を掠っただけで、大したことはないんだ。ただ出血が酷くて、意識が飛びそうになっただけ」

「そんな…」


四季が素早く救急箱を持って駆け寄ると、青波がシャツを脱いだので慌てて目を逸らす。

鍛えられた身体がチラッと見えた…。


「私が処置をするわ!」

先生が名乗り出る。

「逃げたりしないから、縄を解いて!」

「その必要はない」

その場を凍りつかせるような冷たい声で青波は言った。


「お願い!処置させて!」

「もう二度と、あなたの手は借りない」


先生の顔に大粒の雫が伝う。


「青波、ごめんなさい。私が悪かったから…」

先生の言葉を遮るように携帯の着信音が鳴った。
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