恋の病に、堕ちてゆく。
静かになった部屋で、青波は救急箱を持って私の前に座った。

「膝、見せて」

「大したことじゃないんです」

「背中は大丈夫?」

「平気です」

逃げ出そうとした私のことを心配してくれるんだ…。先生のように冷たく突き放されるものと思っていた。


私の膝を優しく掴むと、パンツの裾を捲り、擦りむけた膝に傷薬を塗ってくれる。


「あなたの傷に比べたら、こんなの…」

「加奈ちゃんは女の子でしょ。ちょっとの傷でもダメなの。守れなくてごめんね?」

「…守ってくれました。私、青波さんがいなかったら死んでたかも…」

思わず、青波のシャツの袖を掴む。

良かった、青波が死ななくて…。
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