恋の病に、堕ちてゆく。
袖だけじゃ足りなくて、青波の手を握る。


「なんで誘拐犯が、私のことを命懸けで守ってくれるの?」

「……」

「私が死んだって、あなたには関係ないし、その方が都合がいいんじゃないの?」


ひんやりとした手を強く強く握る。


「加奈ちゃん、」


青波は数回、私の手の甲を撫でた。
そしてすぐに手は離された。

もっと、触れていたかった。


「加奈ちゃんを守るために、誘拐したんだ」

「私を守るため?」

あの男から?


「俺たちはーー加奈ちゃんのお父さんに頼まれて、あなたを誘拐したんだよ」


え?
お父さん?なんでお父さんが??
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