恋の病に、堕ちてゆく。
お昼ご飯は簡単にパンで済ませたけれど、夕食は青波と大我がおでんを作ってくれた。

「ねぇ、加奈ちゃん。僕、ちゃんと誘拐犯になれてた?やっぱりこの美貌のせいで無理があったよね?」

「まぁ…」

四季は最初からフランクで、誘拐犯には見えなかったな。

「でもどうして学生の四季さんが、誘拐犯に?」

「卒業したら、就職するの。職場体験だね」

そういうことか…。なんか色々と辻褄が合ってきたな。

でも大我のことは必要最低限の会話だけだったし、まだ怖いというイメージがある。

細い眉に金髪ってだけでも警戒してしまうのに、フードから覗く目はいつも鋭かった。首元のタトゥーも怖すぎる。


「あー、大我さんね」

キッチンでおでんの具をカットする大我を見ていると、四季が察したように言う。


「ビビるよね。でも本当は真面目で優しい人。全然怖くないよ。タトゥーもシールだし」

「シール!?」

再度タトゥーに目を向けると、青波が大我のタトゥーシールを剥がす。

うわ、本当にシールだったんだ…。
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