恋の病に、堕ちてゆく。
お皿洗いすら手伝わせてもらえず、私は一足先に部屋に戻った。廊下に置かれた監視用の椅子は撤去されていた。固い椅子に何時間も座らせていただけでなく、スタンガンまで…。怪我してないかな?

私が大人しくしていれば青波も怪我をすることはなかったのにな。お母さんのことを聞いて無我夢中で走り出してしまったけれど、今となっては後悔している。

先生は私なんかに、嫉妬していたとは信じられない。青波は仕事だから、私に優しく接してくれていただけだ。

誘拐でなく、仕事だからだ。


「はぁ…」

気が抜けたからか急に眠くなってきた。
ベッドに横になると、イルカのマスコットがいつもよりも笑っているように見えた。

眠いけれど、最後の夜だ。

青波とおやすみを言ってから寝たい。

そう思っていたのに、意に反して私は久しぶりの深い眠りに落ちた。
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