恋の病に、堕ちてゆく。
「もう人通りが少ない道は歩かないようにね」

「はい」

突如襲われれば、防犯ブザーを鳴らせる暇がないことを知った。人間は銃の前では無力だし、男の力には敵わない。もっとよく注意しないと。

「今日まで、ありがとうございました」

ベッドの上で正座をして頭を下げる。

「こちらこそ、ありがとう」

青波も姿勢を正してくれた。

「さぁ、寝よう。寝不足の顔で、お父さんに会えないでしょう」

「うん」

横になると、布団をかけ直してくれた。

「青波さん、聞いてもいいですか?」

「いいよ」

聞きにくいけど、聞かなかったら後悔する気がする。
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