恋の病に、堕ちてゆく。
「眠いでしょ?ベッドに運ぶよ」

ふわりと身体が浮く。

「重たいからいいよ」

「そう?軽いよ」

ゆっくりベッドに下ろされて、首元までしっかり布団をかけられる。


半開きの目で青波を見ると、優しく前髪を撫でられた。


「おやすみ」

「……」

誘拐犯の前で眠るなんてありえないことだけど、今はもうこの眠気に耐えられそうにない。


「なにも、しないでね」

「しないよ、だからゆっくり休んで」


その言葉を合図に、私は深い眠りに落ちた。
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