恋の病に、堕ちてゆく。
あの誘拐犯は、奇跡的に一命を止めて彼女の元に還って、罪を償って、最後まで幸せに暮らした。


そんな夢を見た。


目を覚ました時、部屋に青波はいなかった。


ふあぁ。

よく眠れたようで頭が軽くなって、スッキリした。


そういえば乾燥機に制服を入れっぱなし…。シワになってるよね。

勝手に外に出たら怒られるだろうし、大我に声をかけようかな。

ドアを開けて、外の様子を伺う。


「あ?」


パイプ椅子に座った大我は怪訝そうに私を見上げた。

白黒で統一されたこの家で唯一、不格好なパイプ椅子だ。
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