恋の病に、堕ちてゆく。
カチャリと、銃の嫌な音が耳元で響く。


大我によってタンスの扉が閉められ、暗闇に包まれる。


「大人しくしていたら、危害は加えない。動くな、黙っていろ」

さっきまで一緒に朝ご飯を食べてたのにね。

今は人が代わったように、険しい目で私を見下ろしている。


「いい子だ」

狭いタンスの中で密着し、青波の息が顔にかかる。

大きな手で口元を覆われて、その手を噛んでしまいたい衝動に駆られる。

だって警察だよ?千載一遇のチャンス!

逃げたい。お母さんとお父さんに会いたいよ。


自然と溢れて出た涙を、青波が優しく拭ってくれた。
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