恋の病に、堕ちてゆく。
優しく接してくれることのほうが多いのに、逃げ出すことは許してくれない。

私を懐柔したいだけなんだ。
自身の目的のために。


「泣くな、大丈夫だから」


なにが大丈夫なの?あなたが一番危険で、私を泣かせている張本人だ。

女子高生相手に銃を突きつけて、こんな場所に閉じ込めている最低な人間だ。


「…銃、しまってください。抵抗しないから」

「…分かった」

青波は銃をパンツのポケットの中に入れ、そっと私の頭を自身の胸に押しつけた。

まるで抱き締められている、そんな態勢に思わずたじろぐと、より力を入れて引き寄せられた。


「動かない」

「……」

「ごめんね、怖がらせて」

囁かれた言葉に、目を瞑る。

謝るくらいなら解放して欲しいのに…。
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