恋の病に、堕ちてゆく。
青波の背中に手を回す。

彼のポケットから、銃を引き抜ける態勢だ。

後数センチだけ手を伸ばせば掴める。


今なら、できる。


でも、どうしよう。
銃をとったとして、撃てるのかな。

私に、人が撃てるの?

逃げ出すために青波に銃を向けて、もし急所に発砲してしまったら?青波が死んだら?


怖くて、手を伸ばせなかった。


青波の胸の鼓動が聞こえる。その脈打つ音は早く、彼も緊張しているのだと気付いた。

弱虫な私は青波の胸に顔を押し付けて、時が過ぎるのを待つことしかできなかった。
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