恋の病に、堕ちてゆく。
今度こそ涙が止まらない。

弱虫の自分が情けなくて、大嫌いだ。


「少し休もうか」


背中に腕を回された瞬間、青波に抱き上げられた。

「なっ、」

お姫様抱っこだ。

昨日は眠くてそれどころじゃなかったけど、はっきりとした意識の中でされると恥ずかしくて暴れたくなる。


「危ないから動かないの」

「下ろして!」

「はいはい、下ろしますよ」


私をベッドの上に横たわらせると、シャツの袖で涙を拭いてくれた。


「怖かったね」

「………あの映画の誘拐犯は、」

「うん?」

「仲間を裏切って、ヒロインを助けてくれました」

「そうだね」


察しのいいあなたなら、
もう私の言いたいことが分かるでしょう?


「私を助けて。お願い、私を此処から逃して」


涙を拭ってくれた手を掴み、固く握った。

青波の手は、ひんやりと冷たかった。
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