恋の病に、堕ちてゆく。
また同じ薬がテーブルの上に置かれた。

あ、朝ご飯。食べかけだ…。


「あの顔に、優しい性格でしょ?スタイルも抜群だし。誘拐犯だろうが、好きになってもおかしくないんじゃない?」

なんで囚われた先で、その仲間と恋バナをしなくちゃいけないの?


「先生は、青波さんのことが好きなんですか」

イライラしながら、質問を投げ返す。

「ええ、好きよ」

ぷっくりとした唇を動かしながら、「青波が、好き」と繰り返された。


「あなたはどうなの?」

「私は犯罪者を好きになったりしません。絶対に」

「じゃぁ仮に、青波が犯罪者でなかったら。好きになる?」

「……」

そんな質問は意味がない。

「もっと違う出会いをしていたら、好きになったでしょう?」


違う出会い?そんなの知らないし、分からない。


「ありえないです」

好きじゃない、好きにならない。
私をこんな目に遭わせる青波が大っ嫌いだ。
< 76 / 261 >

この作品をシェア

pagetop