恋の病に、堕ちてゆく。
いくら優しくしてもらっても、手を握ってもらっても、温かいご飯を作ってくれても、

犯罪者のことを好きになるはずがない。


「先生、私は此処から出たいだけなんです」

「……そうね。ビタミン剤も置いていくわね。薬はしっかり飲んでね」

「はい」

「後、これ」


そう言ってトートバッグから取り出された袋を渡された。

よく見かける大型書店の袋だ。

まさか…。

「こんな状況でも勉強するって、あなたは強い子ね」


袋には参考書が3冊入っていた。


「それが終わったらまた買ってくるわ」

「…ありがとうございます」
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