恋の病に、堕ちてゆく。
先生は帰る前に話があると青波を呼んだから、私は部屋にひとりきりになった。

なにを話すのだろう。
2人がどんな関係かは知らないけど、デートに誘うとか?

まぁ青波は断るだろうな。なにせ私の監視があるんだから…。

テーブルの上のおにぎりに手を伸ばす。

2人の関係など私には関係のないことだけど、犯罪者同士の恋愛に反対したくなる。罪を犯した者の幸せを素直に喜べる人間はいるのだろうか。

みんな一生懸命に正しくあろうとしているのだから。


「加奈ちゃん」


部屋に戻ってきた青波は携帯電話を掲げた。


「お父さんと電話が繋がってる。出たい?」

「出たいです!」

お父さん!


「こちらの状況を聞かれたら、"私は大丈夫"そう答えるんだ。いいね?」

「はい」

「スピーカーに切り替えるよ」

保留中を解除して、スピーカーボタンが押されたと同時に叫ぶ。

「お父さん!加奈だよ!大丈夫!?」
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