恋の病に、堕ちてゆく。
青波は床に片手をつき、空いている方の手でペンをくるくると器用に回した。

「ペンってさ、ちょっと危ないよね?目つぶしにもなるし、足とか刺されたら結構痛そう」

やるな、という忠告だ。

ペンで私の心臓を数回、叩く。


「ここ、刺されたら大変だ」

無駄な抵抗はしない。
逃れられないともう知った。


「…身体の傷も、こうやって誘拐した人たちに…?」

だから女子高生相手にもこんなに警戒をしてるの?


「誘拐は、今回が初めてだよ」

「自分の身体をあんなに傷つけて、悲しくないんですか?もっと、自分を大切にする道に変えたらどうですか」

「俺のこと、心配してくれるの?」

意地悪い笑み。
この人の心にはなにも届いてないんだ。

「心配はしてないです…でも、父が助けに来てくれると分かった以上、あなたを傷つける理由はないから。ペンを渡されても、あなたに向けようとは思いません。そんなことをしたらペンを見るたびに、あなたのことを思い出して自分を責めることにもなります」
< 85 / 261 >

この作品をシェア

pagetop