恋の病に、堕ちてゆく。
「加奈ちゃんは頭もいいし、なにより良い子だね」

頭を撫でられ、優しく叩かれる。

なんでこうも恥ずかしいことを簡単にできてしまうんだろう。こっちが照れる。


手をとられて、ペンを握らされた。

「……ありがとうございます」


普通に渡してくれればいいのに。手が触れるだけでドキッとしてしまう。

日常生活でこんなに異性と触れ合うことないし、女子校だし!刺激が強すぎる…。


「よいしょっ」

腰に手を当てて抱き起こされる。

あ…。
傷のある背中に触れないように注意を払われていることに気付いてしまう。

誘拐犯のくせにそこまで配慮しなくても!

やってることがめちゃくちゃだよ…。

私、たぶん黙ってられると思う。
自由の身になって、警察に青波のことを聞かれてもなにも話さないでいられる気がした。

青波がそれを望むのなら。
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