恋の病に、堕ちてゆく。
ペンを見る。
"AOBA"と文字が彫られた青いシャープペンだ。


「これ、あなたの?」

「先生に筆記用具を頼むの忘れちゃったからね」

でも名前入りって特別だよね。私が借りてもいいのかな?


「本当にいいの?」

「構わなよ。でも人からもらった大切なものだから、無くさないでね」

そうだよね。
名前入りのプレゼントって多いもんね。


「青波って、本名なんですね」


てっきりコードネームのようなものだと思った。それじゃぁ大我も本名?


「うん、本名だよ。そういえば一度も名前を呼んでくれてないよね?」

頭の中では青波、青波って呼び捨てしてますけど。名前を呼ぶような間柄でもないしね。

だから先生は私に名前を名乗らなかった。
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