恋の病に、堕ちてゆく。
私のいる部屋は1階のようで、この窓が開きさえすれば脱出が可能だ。

一般の民家に隣接している場所だ。本当に倉庫とは程遠いところに監禁されている。あ、こういう状態は軟禁といった方が近いのかな?


「ね、」

ぞくりと背筋が凍った。

「なにしてるの」

窓枠に両手をつかれ、私はその中に閉じ込められた。


気付かなかった。
部屋のドアが開いた音も、私に接近する足音も。

嫌な汗をかく。

この声は、青波のものじゃない。


「…なにも、」

「そっかあ」

え?
呆気なく解放されて振り返った先には、私と同じくらいの男の子が無邪気な笑顔で立っていた。
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