恋の病に、堕ちてゆく。
うわ、王子様みたい。

初めて見る人だった。

前髪重めのシルバーの短髪に、長いまつ毛と、くりくりとした丸い目。えくぼと白い歯を見せて笑いかけてくれた。


「勉強してるって言っても、どうせみんなサボるでしょ?だから様子を見に来たんだ」

「……」

「思った通り、サボってたね」

人懐こい笑顔だけでなくウインクまでされる。

「勉強つまらないでしょ?僕と話そうよ!」


窓の外を見ていたことを咎められることはなく、ホッとした。


「あ、あの、誰ですか?」

「そうだ、名乗るの忘れてたね!シキだよ。季節の四季(しき)ね!」


今朝、聞いたばかりの名前だ。

「加奈です」

「うん、知ってる!宜しくね」

四季も誘拐犯の一員ってことだよね?
全然見えないんですけど…。
< 91 / 261 >

この作品をシェア

pagetop