隣国の王族公爵と政略結婚したのですが、子持ちとは聞いてません!?
4、生涯、あなただけ

 文字を学んだ。
 ティータイムも共にした。

 言われた言葉がレイラの脳裏をぐるぐる巡る。

「それって、どういうこと? それって、あら? あら?」
 
 レイラが首をかしげて目を瞬かせる中、イーステンは薔薇園にある純白のガーデンチェアにレイラを座らせた。
 そして、なんとその前で膝をつくではないか。
 
「イーステン!?」 
 
 姫君に忠誠を誓う騎士のように。
 女神に許しを請う罪人のように。
 イーステンはレイラを見上げ、語り始めた。
 
 
「レイラ姫。あなたが優しくしてくださったあの子供は、この私だったのです」

「あ、あなたがあの子供だと仰るの?」

 
「そう。これは王家の秘密なので、本当は隠しておきたいことだったのですが。特に、隣国出身のあなたには秘めておこうと思っていたのですが」
 実際の人柄もあまりわかっていなくて、何かあれば隣国に情報を流されてしまう危険性があったので、慎重になっていたのだと言い訳して、イーステンは言葉を続けた。
「私は、雨が降ると子供になってしまう体質なのです。我が王家には、たまに私のような特異体質の者が生まれるのです」
 
 イーステンは申し訳なさそうにそう言い、言葉を続けた。

「けれど、子供の姿であなたと接してわかりました。あなたはとても優しくて、好ましい人物で、信じても大丈夫な方なのだと」

 イーステンの黒い瞳がじっと自分を見つめている。
 レイラはその瞳を見つめ返し、ドキドキと騒ぐ胸の鼓動を意識しながら頬に手を当てた。
 火照った頬が、熱い。

「姫。私に優しくあたたかに接してくださり、ありがとうございました。あなたを騙すような状態になってしまい、申し訳ありませんでした」
 イーステンが真剣に謝罪するので、レイラはその話が真実なのだと信じた。
  
「……それで、たびたび急用を思い出されたり、不在になられていたのですね」
 初夜に来られなかったのは、雨が降っていたからなのだ。
 レイラはあの夜の雨音を思い出し、納得した。

 
「レイラ姫。誓って申し上げましょう。私には隠し子もいなければ、愛人もおりません。私が愛するのは、生涯あなただけである、と……誓います」

 イーステンはそう言ってレイラの手を取り、許しを請うように熱く囁く。
「私たちは、お互いのことをまだあまり知りませんが、これから少しずつ共に過ごす時間を増やし、夫婦としての仲を深めていきたいと、私は考えています」

 甘やかに柔らかに、心を蕩けさせるように囁かれて、レイラは真っ赤になってコクコクと頷いたのだった。胸がいっぱいになって、声は出せなかった。
 そんなレイラを見てイーステンは嬉しそうに微笑み、至高の宝物に触れるようにレイラの指先に自分の唇を寄せた。
 
「美しく、優しきレイラ姫。あなたを我が公爵家にお迎えできて、私は光栄です。あなたを必ず幸せにいたしましょう」
 

 
 
 * * *
 
 

 ちなみに後日、ゆっくりと仲を深めた二人がついに初夜を迎えることになるのだが、熱く愛を囁いてキスをした旦那様が突然の雨のせいで子供になってしまうというハプニングがあったのだとか。


 ……なにはともあれ、めでたし、めでたし!


 ――――HAPPY END!
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