岩泉誠太郎の結婚
「もの凄く不本意ではあるけど、安田さんとの関係を公表するのは、招待状を出すタイミングでいいかなと考えてるんだ」
「招待状?」
「結婚式。そこまで整ってれば、さすがに邪魔は入らないと思うから」
「結婚式‥‥え!?結婚式!?」
「立場上、披露宴をしないってわけにはいかないと思うんだ。それなりの会場をおさえるには最短でも式は半年先になってしまうし、公表は数ヶ月待って欲しい。あ、入籍だけ先に済まそうか?安田さんのご両親に許可をもらえたらすぐにでも‥‥」
「ちょ、ちょっと、待って下さい!」
「あ、やっぱり入籍は結婚式まで待ちたい?記念日がややこしくなっちゃうか‥‥でも、両方祝うのもいいよね。俺と安田さんの特別な日が増えるなら、むしろありかもしれない」
「いや、そうじゃなくて。恋人ってだけでも実感がないのに、急に結婚て言われても‥‥」
「え?あ、ごめん。そうか、そうだよね。大丈夫、ちゃんと準備してあるから!」
安田さんがかわいいあまりに、つい先走ってしまった。
元々告白が成功したらクウェートでプロポーズするつもりだったのだ。予定がずれ込んでしまったせいでうっかり飛んでいたが、プロポーズは外せない行程のひとつだろう。
少しでもいい雰囲気になればと予約したのはエアポートビューの部屋。せっかくなので、ソファーに座る彼女の手を取り窓辺へ誘う。そして、ポケットからリングケースを取り出し、彼女の前に跪いた。
「安田さん、どうか俺と結婚して下さい」
ケースを開き指輪を掲げる。安田さんは呆然と立ち尽くしたままで、全く反応がない。一瞬戸惑ったが、指輪を取り出し、彼女の薬指にそれをはめるも、やはり無反応。これはどうしたものか。
「そうだ、シャンパンで乾杯しよう」
完全に動かなくなってしまった彼女の元を一旦離れ、バーカウンターに用意されていた冷えたシャンパンをあける。その大きな音に、ようやく彼女が反応した。
少しぼんやりしているようにも見える彼女にシャンパンを手渡し、グラスを合わせる。
「やっと俺のものにできた。一緒に幸せになろう。愛してるよ、椿‥‥」
距離を詰め、少しかがんで顔を近づける。彼女の唇に触れるまで、あと数センチ‥‥
「ご、ごめんなさい!私、ちょっと‥‥歯医者!そう!歯医者の予約を忘れてました!」
「え?」
あれ?もしかして、逃げられた‥‥のか?
「招待状?」
「結婚式。そこまで整ってれば、さすがに邪魔は入らないと思うから」
「結婚式‥‥え!?結婚式!?」
「立場上、披露宴をしないってわけにはいかないと思うんだ。それなりの会場をおさえるには最短でも式は半年先になってしまうし、公表は数ヶ月待って欲しい。あ、入籍だけ先に済まそうか?安田さんのご両親に許可をもらえたらすぐにでも‥‥」
「ちょ、ちょっと、待って下さい!」
「あ、やっぱり入籍は結婚式まで待ちたい?記念日がややこしくなっちゃうか‥‥でも、両方祝うのもいいよね。俺と安田さんの特別な日が増えるなら、むしろありかもしれない」
「いや、そうじゃなくて。恋人ってだけでも実感がないのに、急に結婚て言われても‥‥」
「え?あ、ごめん。そうか、そうだよね。大丈夫、ちゃんと準備してあるから!」
安田さんがかわいいあまりに、つい先走ってしまった。
元々告白が成功したらクウェートでプロポーズするつもりだったのだ。予定がずれ込んでしまったせいでうっかり飛んでいたが、プロポーズは外せない行程のひとつだろう。
少しでもいい雰囲気になればと予約したのはエアポートビューの部屋。せっかくなので、ソファーに座る彼女の手を取り窓辺へ誘う。そして、ポケットからリングケースを取り出し、彼女の前に跪いた。
「安田さん、どうか俺と結婚して下さい」
ケースを開き指輪を掲げる。安田さんは呆然と立ち尽くしたままで、全く反応がない。一瞬戸惑ったが、指輪を取り出し、彼女の薬指にそれをはめるも、やはり無反応。これはどうしたものか。
「そうだ、シャンパンで乾杯しよう」
完全に動かなくなってしまった彼女の元を一旦離れ、バーカウンターに用意されていた冷えたシャンパンをあける。その大きな音に、ようやく彼女が反応した。
少しぼんやりしているようにも見える彼女にシャンパンを手渡し、グラスを合わせる。
「やっと俺のものにできた。一緒に幸せになろう。愛してるよ、椿‥‥」
距離を詰め、少しかがんで顔を近づける。彼女の唇に触れるまで、あと数センチ‥‥
「ご、ごめんなさい!私、ちょっと‥‥歯医者!そう!歯医者の予約を忘れてました!」
「え?」
あれ?もしかして、逃げられた‥‥のか?