幼なじみの不器用な愛し方
自分のことだと平気で待たせるくせに、人のことになると途端にせっかちになるの、どうにかならないの。


「あたし、駅前の本屋さん寄って帰るけど」

「え。なんで」

「新しい参考書探そうと思って。有斗はどうする?」


明日から、一泊2日とは言え泊まりがけでの撮影なら準備が必要なはず。

漫画や小説を読むタイプでもないしと思って聞くと、有斗は眉間に皺を寄せつつ唇を尖らせた。


「……行く」


あら意外。

そう思ったのが素直に表情に出たのか、あたしの顔を見て有斗の表情が不機嫌になる。


「何だよ、どうするってお前が聞いたんだから行くって返答でも文句ねーだろ」

「ないけど。本屋さんなんて普段行かないからちょっとびっくりして」


自分が載ってる雑誌を店頭で見たいなんていうタイプでもない。

あたしの言葉に、有斗は何も応えなかった。


正門を通り過ぎ、先に終礼を終えていたのであろう他クラスの電車通学らしき生徒に混じって、駅を目指した。

あたし達の家のある場所から考えると、家の最寄駅の一駅隣に位置している。
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