幼なじみの不器用な愛し方
「……有斗?」


そこには、部屋着になっているスポーツメーカーのトレーナーを着た幼なじみの姿が映っていた。


どうしたんだろ? ご飯は冷蔵庫に入れてあるって言ったのに。

首を傾げつつ、リビングを出て玄関に向かう。

扉を開けると、既に門の中まで入ってきている有斗が眉間に皺を寄せて立っていた。


「有斗? どうし──」

「遅え」

「……はい?」


不機嫌な様子を隠す様子もなく、あたしの横を通り過ぎて家の中へと入っていく有斗。

あたしはぽかんとして、その背中を追うのが一歩遅れた。いやいや、ちょっと待て。


「ご飯だったら有斗んちにあるって……」

「…………」


制止するように声をかけても、有斗はずんすん廊下を歩いて振り返りもしない。……別に、来ることに問題はないんだけどさぁ。

諦めの息を小さく吐いて、制服を着替えるべく階段上の自室に向かった。




「…………」

「…………」


キッチンに立つあたしと、カウンターの向こう、リビングのソファーで、あたかも自分の家にいるかのようにくつろいでいる有斗の間には、長い沈黙が流れている。
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