幼なじみの不器用な愛し方
「へぇ、だから今日有斗くんいないんだぁ」


翌日。ぞろぞろとクラスメイト達が登校してくる中、机を挟んで結子が言う。

その隣でツジが相槌しかしていないところを見ると、たぶん、本人から直接聞いていたんだろう。


「束の間、平和な学校生活を送らせていただきます」

「もう、みーちゃんったら〜。寂しかったりしないの?」


小首を傾げてあたしの顔を覗き込む結子に、思わず笑ってしまう。


「ないない。生まれてこの方、ほとんどずっと一緒なんだよ?」

「だからこそじゃん。傍にいないと変な感じしない?」

「存在感が大きいからこそ、あーいないんだなって思うことは多いけど……」


ちらりと辺りを見回す。

いつもより感じる視線が少ないのは、きっと気のせいなんかじゃない。


「たまには離れるのもいいんじゃない? 有斗も今頃、口煩い幼なじみから解放されて羽を伸ばしてる頃だと思うよ」


あたしが言うと、結子は不満げに唇を尖らせたけれど、それ以上は何も言わなかった。
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