おじさんとショタと、たまに女装
第六章 温泉と学生時代
ぺちゃんこ
浴槽は俺が独占しているため、仕方なく航太は身体を洗うことにした。
洗うと言っても、スクール水着の上からだが……。
ボディシャンプーを手に取り、スポンジに少しかける。
器用に泡立てていく航太。
手の平でふわふわと揺れる、大きな泡を見て笑う。
「ははは、見てよ。おっさん、しゃぼん玉が作れそうだぜ」
そう言われても、視線を彼に向けることを躊躇してしまう。
また、見てしまいそうだから……。
今はバスチェアの上に、脚を閉じて座っているから目立たないけど。
意識しなくても、あの可愛らしい膨らみに、目が行ってしまいそうで怖い。
俺のことなぞお構いなしに、航太は声をかけてくる。
「なあ、おっさん。一緒に身体を洗おうよ」
思わず、アホな声が出てしまう。
「は!? い、一緒に洗うだと!?」
「な、なんだよ……別に男同士だから良いじゃん」
と唇を尖がらせる航太。
まあ、そう言われたらそうか……。
俺の考えすぎだ。
今は、お互い水着を着ているし。間違いなんて起こらないだろう。
※
お言葉に甘えて、背中を洗ってもらうことにした。
「おっさん、気持ち良い?」
「うん……」
彼の小さな手がとても心地よかった。
思えば、誰かに背中を洗ってもらうことなんて、経験したことないかも。
子供の頃も両親は仕事で忙しく、あまりかまってもらえなかったし。
あいつと付き合っていたころも、一緒にお風呂へ入ることも無かった。
際どいコスプレとかを着るくせに、そういうところは恥ずかしがり屋で……。
お互い水着を着ているとはいえ、裸の付き合いってのは、初めてかもしれない。
「おっさん! 背中、洗い終わったからさ。今度は頭をしようよ!」
「え……頭ぐらい、自分で出来るよ」
恥ずかしさから、断ろうとすると、航太が怒り出す。
「なんでだよ!? 良いじゃん、こういうのもマンガに使えるかもしれないじゃん!」
「うっ……」
仕方なく、シャワーで身体の泡を流し、今度は頭を洗ってもらうことに。
頭を洗うと言うのだから、後ろから洗ってくれるのかと思ったが、彼のやり方は違うらしい。
俺が航太の方に顔を向けて、正面から洗うスタイルだ。
「なあ、洗いにくくないのか?」
「ううん。オレ、いつもこのやり方で母ちゃんの頭、洗ってるもん」
「あ、綾さんと?」
「そうだよ。だって母ちゃん、いつも酔っぱらってるから。オレが洗ってやらないと、髪がバサバサだし」
「……」
まだ母親の綾さんとお風呂に入っているのか。
なんだか想像したら、イラっとするな。
航太じゃなくて、綾さんに。甘えんなよって……。
それにしても、距離が近い。
目の前には、スクール水着の胸元が見える。
白いゼッケンが貼ってあり、前の持ち主の名前『2-A 高砂 美羽』と書いてある。
しかし、今はそんなこと、どうでも良い。
航太は、俺の頭を洗うのに集中しているため、気がついてないようだが。
後頭部を力強く掴み、自身の胸へ俺の顔を擦りつけている。
「う~ん……おっさんて、後頭部がぺちゃんこなんだね?」
「そ、それがどうした?」
「なんていうか、頭の形が悪いなって思ってさ」
「……」
どうでもいいだろ、そんなこと。
心臓がバクバクとうるさく、口から飛び出そうだ。
航太のまな板みたいな、薄い胸板に……興奮している自分が許せない。
※
航太に全身を綺麗に洗い流してもらったところで、俺はそろそろ終わりにしようと告げる。
「もう……これぐらいで、いいだろ?」
「えぇ~ まだお風呂に入ってないじゃん」
「俺は入ったよ。先に上がるから、航太だけ入ればいいだろ? どうせ、こんな狭い浴槽じゃ、二人は無理だって」
すると、航太は唇を尖がらせる。
「なんだよっ!? 一緒に入らないとマンガに使えるか、わかんないじゃん!」
「でも……どうやって、入るんだ?」
「簡単だよ、おっさんが先に入って、後からオレが入るんだよ」
「……?」
ちょっと彼の言っていることが分からなかった。
しかし、数分後。俺はお風呂から出れば良かったと後悔する。
航太の言った通り、先に俺が浴槽へ浸かると……。
何を思ったのか。航太が俺の股間に跨ってきた。
水着越しとは言え、小さな尻が腹の上に乗っかっている。
ヤバい……このままじゃ、”反応”してしまう。
「あ~ 気持ち良い~ ねぇ、おっさん?」
「……そ、そうだな」
早く言い訳して、ここから逃げないと。
航太にバレるぞ。