おじさんとショタと、たまに女装
脱いで……
「やっぱり、暑いから脱いじゃおうっと!」
どうやら航太はアルコールを飲んだせいで、身体の血流が良くなったようだ。
顔を真っ赤にして、ヘラヘラと笑っている。
今、俺の部屋は暖房など、一切つけていない。
年末に入ったし、寒いに決まっている……。
だが、目の前に立つ少年は、体操服を勢いよく脱ぎ捨てる。
「あ~ すっきりした。おっさんも脱いだらぁ~?」
そう言って、胸を張る航太。
畳で座っている俺からすると、どうしても二つの蕾が目に入ってしまう。
小麦色に焼けた肌とは違い、ピンク色の小さな蕾だ。
ダメだ!
見惚れている場合じゃない。
早く彼の体内から、アルコールを出してあげないと。
このままでは、危険だ。
「こ、航太……あのな、お水でも飲まないか?」
下から彼の小さな顔を眺めていると、なんとも変な気分だ。
まあブルマ姿で、上半身は裸だものな。
今、誰かにこの場を見られてしまったら、言い訳できない状況だ。
「えぇ~? いらなぁ~い! それより、もっと楽しいことをしようよ!」
「へ?」
「待ってて……今、持ってくるからぁ……」
恐らく、生まれて初めて飲んだお酒だったのだろう。
千鳥足で部屋の中を歩いている。
しばらく待っていると、先ほど壁に飾りつけをする際に使った、トートバッグを持って来た。
「あのね……この中にいいもんが入ってるんだ」
トートバッグの中を見るために、しゃがみ込む。
「ごくん……」
それを見た俺は、思わず生唾を飲み込む。
両脚を左右に大きく広げているため、ブルマがよりフィットしているからだ。
もちろん、小さな”彼のシンボル”もだ……。
おまけに酔っぱらっているから、ブラウンの大きな目はとろんとしている。
まるで……俺を誘惑しているような。
「じゃ~ん! これだよ!」
彼の声を聞くまで、我を忘れていた。
「ど、どうした? 航太?」
「見て見て~ この前の喫茶店のマスターからもらった、”紙風船”だよ!」
「……」
そうだよな、中身はまだ子供だから。
いくら酔っぱらっても、大人の俺みたいな考えには至らないよな。
だって、クリスマス・パーティーだし……。
※
「おい、航太! そんなに走り回ったら危ないぞ!」
泥酔した航太は、俺の声が聞こえていないようだ。
「ははは! この紙風船ってけっこう頑丈だぜ!」
自身の唇で膨らませた紙風船を、手の平で叩いて遊ぶ。
もう、かれこれ10分ぐらい遊んでいると思う。
航太も中学2年生だというのに……脳内はまだまだ子供だな。
しかし、着ている格好が良くない。
体操服は脱いだままだし、下半身は紺色のブルマだ。
最近、見かけないが……。あのクラスメイトに、この場を見られたら通報されるだろう。
そろそろ、彼に体操服を着させるか。
畳に落ちていた上着を拾うと、ゆっくり立ち上がる。
その時だった。
パンッ! という破裂音が部屋に響き渡る。
「あっ……割れちゃった」
どうやら、彼が気に入っていた紙風船が割れてしまったようだ。
驚いた航太はその場で、呆然としている。
「割れたなら仕方ないさ。また買えばいいだろ?」
そう言って、彼の頭に体操服をかけようとした瞬間。
いきなり航太が振り返る。
じーっと俺の目を見つめて、何か考えているようだ。
「どうした?」
「あのさ……おっさんの口にも息を吹きこんだら、紙風船みたいに膨らむと思う?」
「なっ!? 何を言って……」
彼は酔っぱらっている。
だから急に変なことを言いだしたんだ……だって、おかしいだろ。
唇を使って、息を吹きこむなんて。
戸惑う俺を無視して、航太はゆっくりと近づいてくる。
頬を赤くして、微笑みながら……。
気がつけば、俺の首には褐色の細い腕が回されていた。
「こ、航太……?」
「いいじゃん、試そうよ」
身長も低いし、華奢な体型だ。
嫌だったら突き飛ばせいい……のに、出来ない。
彼に言われるがまま、俺は身を任せてしまう。
「んん……」
第一印象は、酒臭かった。
でも、それよりも彼の唇が柔らかくて……。
小さくて愛らしい。
元カノの未来よりも、甘いキスだと思った。
ここまでやったら、止めることが出来ない。
今まで、抑えていた感情が湧き出る。
小麦色に焼けた背中へ手を回して、優しく抱きしめる。
それだけじゃ我慢できなった俺は、手を腰へ下してしまう。
「っさん……」
唇を重ねて、初めて航太の声を聞いた。
あまりの気持ち良さに、彼を無視していたことに気がつく。
「悪い、航太……これは、その……」
「あのね……なんか、頭がフワフワして……」
「え?」
「もう無理かも……」
そのまま、立って眠ってしまった。
胸の中で眠る航太を見て、ようやく理性を取り戻す。
「なにやってんだ、俺は!」
とりあえず、自身の頬をビンタしておいた。