元カノ
数日後、

「あ!
シーン!
ここ、ここ!」

ファミレスで、詩生里は心太に手を振った。

「おまえ、詐欺やんけ」

会って早々、詩生里は心太に言われた。

「は!?」

思わず、眉をひそめる詩生里に、

「実物の方が可愛い」

照れたように心太は言った。

席に座るなり、

「小さい頃は心太でもよかったねん。
だけど、社会人になり、自己紹介すると、変な名前って笑われ、名刺を渡すとトコロテンって笑われ、つらいねん」

身の上話を始めた。

「毎日、そんなんで俺も改名すればよかった…」

「俺も?」

詩生里は首を傾げる。

「高校時代に付き合ってた彼女は、ミツキって言うねんけど、漢字が海に月でクラゲやねん。
彼女は高校時代に改名してたっけ」

元カノの話に、何故か詩生里の胸は痛くなった。
< 10 / 26 >

この作品をシェア

pagetop