元カノ
そのまま朝になり、心太が何か言っていたが、聞き取れなかった。

「…おはよ、シン君。
ちょっと寝れなくて…、何か言った?」

「あ…、ううん、なんもない。
っていうか、寝不足なら寝とけよ?
朝ごはんとか適当にするから」

心太の優しさに泣きそうになる。

「ありがと、シン君」

みっちゃんって誰、そう聞こうと思ったけど、怖くて聞けなかった…。

もし、好きな人と言われたら立ち直れなくなるから…。

「…好きなのはあたしだけなん?」

心太が会社に行った後、詩生里は呟いた。

答えはわかっている。

…苦しい、胸が、張り裂けそう…。

詩生里は起き上がると、カッターナイフで手首を切りつけた…。

胸が苦しくなるといつもしてしまう。

こんな自分は嫌なのに…。

自分を傷つける手は止まらない…。
< 21 / 26 >

この作品をシェア

pagetop