先生!見ちゃダメ!
ちはるセンセー





いま話題の人がいる。




「千晴くーん!」

「…藤倉先生、な」




困ったように女子生徒を諭す彼こそが、その話題の人、藤倉千晴先生。

先週から教育実習に来ている、大学生。


困った顔ですら見惚れてしまいそうなほどのイケメンで、常に女の子たちが周りにいる。

けれど、誰にでも優しい上に、教え方もわかりやすい。女子だけでなく、男子からも大人気だった。




「千晴センセーってウチの高校出身ってほんと?」

「そうだけど…“藤倉先生”、な」




キラキラ女子の質問を華麗に躱しながらも、念を押すように彼が言うと、周囲の子たちは「はーい!」とケラケラ笑っていた。



昼休みはずっとあんな感じだ。

彼が人気の理由はわかる。

けれど、さすがに囲まれすぎじゃないだろうか。アイドルじゃないんだから…と思ったところで、ずっと見つめていた彼と不意に目が合った。


…やばい。


不自然なほど慌てて目を逸らすと、近くにいた友人が「花恋?」と怪訝そうにしていたので、私は曖昧に笑った。




「あれ、私のこと呼んだわけじゃなかった?」

「空耳だよ。あ、でも今日放課後カフェ寄って帰らない?」

「いいね!行きたい!」



とぼけてみせると即座に返されたけど、嬉しいお誘い。ウキウキしながら元気に頷いた。


放課後の楽しみができたぞ〜!

放課後カフェに完全に頭がもっていかれた私は、それまで考えていたことはすっかり頭から抜け落ちたまま、午後の授業を受けた。




< 1 / 12 >

この作品をシェア

pagetop