たとえば、こんな人生も②
まだ少し、夏の暑さは残るものの
行き交う人の装いや、町の景色は
徐々に秋色に移り変わっていた


「あら。じゃあ、文化祭の後に修学旅行があるの?」

「はい」


お店の休憩所も模様替え

爽やかな夏色のインテリアを
落ち着いた秋色のものに変えている最中


買い物袋から、新しいクッションカバーを
取り出しながら、一緒に模様替えをしていたシュカさんの言葉に頷く


「忙しいのね」

「でも、文化祭はうちのクラス
休憩所にするみたいなので
準備とかないから楽ですよ」

「それはそれで寂しくない?
せっかくの文化祭なのに、模擬店とかしないの?」


同じように、傍で夏物の片付けをしていたアリサ姉さんが聞いてくる


「部活やってる子は
そっちで出店参加したりするし
個人でイベントに参加する子も多いみたいだよ」

「そうじゃなくて、ひなたは寂しくないの?」


アリサ姉さんの問いかけに
私はきょとんとした後で、首を傾げた


「去年も不参加だったでしょう?」



高校一年生の初めての文化祭

クラスでは模擬店をやることなって
その準備を手伝ってはいたけど、当日は欠席した

怪我や、体調不良が原因ではなく
なんとなく、あの賑やかな場所に
自分は不釣り合いな気がして

でも、それを寂しいとは感じなかった


だけど、姉さん達はそんな私を気にして
私を遊園地に連れていってくれた

文化祭の代わりにと、少し遠い所まで
泊まりがけで


姉さん達のそんな優しい気遣いが
ほんの少し、申し訳なくて


でも、すごく嬉しかった
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