たとえば、こんな人生も②
―――……


「それで、その子達と仲良くなったの?」

「それは、よく分からないですけど…」


一緒に夕食の片付けをしながら
一連の出来事を話せば、いつきさんは
どことなく嬉しそうに笑って、耳を傾けてくれた


「ふたりとも、調理部で
文化祭も、そっちの模擬店に参加するみたいで、良かったら一緒にやらないかって誘われて」

「うん」

「それで…模擬店、参加してみようと思って」

「それ、姫達には話した?」


首を横に振る


「きっと、喜ぶよ」


どうして?と問いかけなくても分かった
いつきさんが嬉しそうに笑う理由も
姉さん達がそれで喜ぶ理由も、想像がついた


「でも、文化祭期間中
帰りが遅くなるかもしれなくて
バイトも休むことが増えるかもしれなくて
ごはんも、準備できないかも…」

「大丈夫。気にしなくていいよ」

「でも、出来るだけ早めに帰ってきます」

「気にしなくていいのに」

「私が、いつきさんと一緒にいたいんです」


いつきさんや姉さん達
大事な人といられる時間は大切にしたい

だから
できる限り、両立できるように頑張りたい


放った言葉に
いつきさんは一瞬だけ目を丸くして
それから困ったように笑う


「……ひなたちゃんは
たまに、不意打ちするから困るんだよなぁ」

「え?」

「かわいいなって事だよ」


伸びてきた大きな手が、優しく私の頭を撫でる


「かと思えば、男顔負けなくらい
かっこいいことしたりするし」

「?」

「姫達が
きみを溺愛する理由がなんとなく分かる」

「私、なにか変なことしてます?」

「してないよ。そのままでいて」


首を傾げる私に
いつきさんは優しい眼差しを向けながら
小さく微笑んだ
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