たとえば、こんな人生も②
―――……


「はい。これ、姉さん達に」

「なーに?ひなたの差し入れ?」

「そう。おにぎり」

「?おにぎり?」


今日の放課後
調理部のミーティングに参加した

他の参加者に挨拶を済ませて
おおまかな説明を受けた後

早速、試作品の参考にと
あのふたりと一緒に
近場のおにぎり屋さんに立ち寄った


おみやげに買ったおにぎりを
姉さん達に差し入れしたら
何も知らない姉さん達は
『なんで、おにぎり?』と
みんな、頭に?マークを浮かべた


事情を説明すれば
これまた、みんな同じように目を点にして
驚いたような反応を見せる



「姉さん達は、おにぎりの具材何が好き?」

「えー?混ぜご飯系が好きかも」

「あたしはツナマヨ」

「私は焼きおにぎりかな」


うんうんと頷きながら
姉さん達の返答をスマホにメモする

そんな私を見て
姉さん達はお互いに顔を見合わせた後
ふわりと目元を和らげた


「ねぇ、ひなた」

「うん?」

「楽しい?」

「…楽しい、かはよく分からないや
ただ、なんか不思議な感じ」


メモの手を止め、
そのまま、スマホの画面に視線を落として
ほんの数十分前の出来事を振り返る



はじめての放課後の寄り道

学校外で同年代の子と話したり
一緒に、ごはんを食べたり
あんな風に過ごすのは初めての事だった

姉さんやいつきさん達と一緒にいる時とは
また違う雰囲気

今、感じてるこの感情を
うまく表現できる言葉が
まだ自分の中には見つからない


曖昧な返しだったけど
その場にいた姉さん達はみんな変わらず
優しい表情を浮かべてる


「楽しめるといいね。文化祭」


口許を緩めたまま、私の頭を撫でる姉さん
応えるように、私は笑い返した
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