たとえば、こんな人生も②
スカートの上に
はらりと落ちてきたのはイチョウの葉

新緑から黄金色に色づき始めた姿を
仰ぎ見てから、再び正面に顔を戻す


「この間、食べたのが美味しかったから
作ってみようかなって」

「韓国のり使ってたやつ?」

「ああ、黄色のたくあん混ぜたやつ
あれ、美味しかった」


お昼休み

中庭にある
お気に入りのイチョウの木の下で
試作品の話し合いも兼ねて
ふたりと一緒にお昼ごはん

あーだこーだと言い合いながら
ひとしきり試作品の話を終えた後

じっと私を見つめていた莉央(りお)ちゃんが、不意にぽつりと呟いた


「……ひなたちゃんって、不思議」

「え?」

「普通に話せるし、すごく優しいのに
どうして、ずっと友達がいなかったの?」

「そうだね
人嫌いってわけでもなさそうだし」


同じように疑問に思っていた様子の
千夏(ちなつ)ちゃんも話に乗る


千夏ちゃんとは同じクラス

普段から、あまりクラスメイトと交流せず
ひとりでいることの多かった私を見て
千夏ちゃんは、私の事を
ひとりでいるのが好きな静かな子なんだろうと、思っていたそう


もともと人が嫌いなわけじゃなかったし
会話だって、そんなに得意ではないけど
話そうと思えば話せる

今みたいに

問題なくコミュニケーションが取れるのに
それをしない私が、ふたりの目には不思議に映ったようで



「…」

「あ…ごめんね
言いたくなかったらいいの
少し気になっただけだから」

「人それぞれ色々あるしね
踏み込みすぎだったら、ごめん」


返す言葉に悩んで
黙り込んでしまった私を見て、慌てるふたり


「ううん、そういうわけじゃなくて
ちょっと…複雑な話になるから…」

「複雑?」


「少し前まで、家庭内で問題があって
それが周りにも広まってて
それで、周囲の人から避けられてたの」


「私も、周りの人を巻き込みたくなかったから、あんまり、自分からは関わらないようにしてて」


「それが、理由」
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