たとえば、こんな人生も②
☆3
――…


「いや、しかし
藤さんが、ただの人たらしだったとは」

「ほんとに」

「だれ?
クールな一匹狼タイプとか言い出したやつ」



放課後の家庭科室


今日の作業も一段落

テーブルを囲んで
持ち寄ったお菓子をつまみながら
お疲れ様のお茶のひととき


千夏ちゃんや莉央ちゃんのおかげで
他のメンバーとも、随分と距離が縮まった

噂の影響もあってか
同年代の子達には、最初は少し警戒?というか
遠巻きに観察されていたけど

一緒に作業をする内に
ちょっとずつ会話するようになって
だんだんと打ち解けていった


それは喜ばしいことなんだけど
最近、不思議なのは…



「……みんな、天然だとか、たらしだとか
よく言うけど…」


そう言われる理由が
いまだに、よく分からず

答えを求めるように、疑問を口にすれば
隣にいた千夏ちゃんが
くすりと可笑しそうに笑う


「ひなたさ、莉央と初めて会った時
莉央にしてあげたこと、覚えてない?」

「なにかした?」

「一度、ごみ箱行きになったお菓子を
拾って食べたんでしょ?」

「…ああ。莉央ちゃんが作ったブラウニー
あれ、美味しかった
また、作ってくれる?」


千夏ちゃんに言われて
あの時のブラウニーの味を思い出し

みんなの紙コップにジュースを注いでくれていた
莉央ちゃんにおねだりすれば
莉央ちゃんは困ったような照れ笑いを浮かべた
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