たとえば、こんな人生も②
☆4
その後

いつきさんやオーナー、姉さん達と
『もしも』に備えて、警戒しつつも
それからは、特に何事もなく時間が過ぎ


あっという間に、文化祭の日を迎えた



普段よりも
たくさんの人で賑わう校内

行き交う人は老若男女、服装、問わず

喧騒と熱気に満ちる廊下
人混みを縫うように
急ぎ足で目的地に向かう


長い列が出来ている教室

その後ろの扉から入って
忙しそうに接客していた莉央ちゃんに声をかける


「莉央ちゃん、代わるよ」

「あ、ひなたちゃん、ありがとう」



家庭科部の模擬店、おにぎり屋さん


みんなで試行錯誤したかいあって
おにぎりの売れ行きは好調

おいしいと評判が広まって
お店にはひっきりなしにお客さんが来ていた

朝から、ずっと慌ただしかったけど
今は、お昼時と言うこともあり
忙しさはピークに達していた


販売と調理とで、ふたてに分かれて
役割分担をしていたけど

あまりに売れるものだから
販売、調理担当関係なく

手の空いた人がいたら
お互いのフォローに入る事になった


調理担当だった私も
仕込みが終わる度に
すぐに販売のフォローに入っていた



「いらっしゃいませ。何にしますか?」

「えっと、ツナと、からあげ、それとー…」



慣れない接客に格闘しながらも

こうして目の前で
みんなと一生懸命作ったおにぎりを買ってもらえるのは嬉しくて

すぐそばの飲食スペースで
美味しそうにおにぎりを頬張る人の姿を見ると
忙しくても、自然と笑みが浮かんだ
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