たとえば、こんな人生も②
お昼のピークが過ぎて
ようやく、お客さんも落ち着いてきた


「ひなた、私達も休憩入っていいって
頑張ってくれたから、長めにどうぞって」

「うん」


仕込みの方も一段落
調理器具を洗い終えた私に
千夏ちゃんが声をかけてきた

ふたりで、エプロンを外しながら
疲れたね、と苦笑混じりに話す


「去年もこんな感じだったの?」

「ううん
去年はそうでもなかったんだけど…
なんでだろうね
たくさん買ってもらえるのは嬉しいけど」


首を傾げて、不思議そうにしながらも
自分が作ったものを
買い求めて貰えるは
誰だって嬉しいもの

千夏ちゃんも上機嫌


「さてと…
ひなた、文化祭初参加なんだもんね?
行ってみたいとことかある?」


鼻歌混じりに
調理室から出た千夏ちゃんが
笑顔で振り返り、聞いてくる


「うーん…」


行ってみたいとこと聞かれて
すぐに思い付かない

忙しさにかまけて
ゆっくり眺めてる余裕はなかったけど

こうして、廊下から
あたりを見渡すと

学校内外問わず、あっちこっちで
本当にたくさん催し物があって、目が回る


「いっぱいあって悩むか
じゃか、とりあえず、莉央のとこ行く?」

「莉央ちゃん?今、休憩中じゃ…」

「だったみたいだけど、クラスの方で人手が足りないみたいで、かり出されてる」

「莉央ちゃんのクラス?
なにやってるの?」

「行けば分かるよ」


楽しそうに笑う千夏ちゃんに手を引かれて
莉央ちゃんの所へ向かった
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