たとえば、こんな人生も②
☆5
「…」



ベッドの上で、ひざをかかえて
顔を埋めていると
控えめに部屋の扉をノックされる



「ひな、入るよ」



返事を待たずに、まこちゃんが中に入ってくる



「……まこちゃん」

「はい。飲み物と軽食
事情聴取とかで疲れたでしょ?
食べたら、休むといいよ」



サイドテーブルに持ってきてくれた軽食を置いて
優しく笑いかけてくるまこちゃん

その笑顔にほっとして

それから



「……ひな」



ぼろぼろ涙をこぼす私を
まこちゃんは抱き寄せて
よしよしと何度も頭を撫でる



「………怖く、て」

「うん」

「……い、いろいろ、思い、出して、
へ、平気だったはず、なのに…」

「うん」

「……違うって、分かってる、のに…
…お、男のひと…ってだけで…」

「うん」

「……怖くて…たまらなくなって…」

「うん」

「まこちゃん、どうしよう…
いつきさん……傷付けた…」



泣きながら、まこちゃんにすがり付く

まこちゃんは何度も『大丈夫だよ』と言いながら
私が泣きつかれて眠るまで
そのまま、そばにいてくれた
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