たとえば、こんな人生も②
「……好意?」

「ひなたは、ますます可愛くなったからね」

「美冬ちゃん」


ひょこっと背後から現れた美冬ちゃんが
微笑みながら、荒れ狂うアリサ姉さんをなだめるように、その頭をぽんぽん叩いた


「いつきと一緒に暮らし始めてから
ひなたはいい意味で変わったから
顔色も良くなったし、体も。
いい感じに育ったからね」

「美冬、言い方おじさん」

「でも、そうね
健康的になったわ。心も体も」


確かに、お父さんの件も落ち着いて
いつきさんと一緒に暮らし始めてから
私は精神的にも身体的にも安定していた


ごはんも食べられるようになって
眠れるようにもなった

身体に新しい傷ができることもなくなった


常に血の気のない顔
細すぎると心配されていた体

でも、今は血色も良いし
体型も標準より少し痩せている程度

身体に傷跡は残っているものの
幸いなことに、顔や見える部分にあった傷は
今はそれほど目立たない


自分でも、その変化は実感していた



「うぅ……もとから可愛いのに
さらに可愛くなったせいで、余計な虫が…
私のひなたなのに~~……っ」

「今では男が寄ってこなかった方が奇跡的なんだよ。これだけ可愛くてモテないはずがない」

「おおげさだなぁ
姉さん達は身内贔屓なだけだよ」

「あら。そんなことはないわ
もともと、ひなたは綺麗な顔をしてるもの」


「お母様譲りの顔なんでしょう?」



シュカさんまで…っと口にしかけて
続く言葉を飲み込んだ

私の顔はお母さんに似てる
それは、自覚してたから

自分がって言われるとぴんとこないけど
お母さんがって言われれば、頷ける


あの人は間違いなく綺麗な人だった




「ひたな。外でも声をかけられることが増えたなら、いつきに報告しなよ
このあたりは変な人も多いから。念のため」

「美冬ちゃん達は過保護だなぁ」


「ひなたが自分に無頓着なだけだよ」

「ひなたは自己評価が低すぎるの!」


仲良く声を揃えたアリサ姉さんと美冬ちゃんに
苦笑いを返しながら、私は再び手を動かした
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