たとえば、こんな人生も②
「…」


色んな事を思い出して、泣きそうになる


「にゃー」


心配そうに見上げてくるくろ
その小さな身体に顔を寄せ、堪えていると

がチャリとリビングのドアが開く



「寝れねーの?」

「……シン君」


眠そうな顔でやってきて
泣きそうな私を見おろすシン君


「なんか飲むか?」


無言で首を横に振る
シン君は「ん」と小さく頷いて
そのままキッチンに向かった




私がいるのは
いつきさんの家でも、自分の家でもなく

まこちゃんとシン君の家



いつきさんと一緒に暮らすのが
難しい状態になってしまったから

最初は自分の家に戻るつもりだった

お父さんは、今、治療のため
更生病棟に入院中で不在だったし
ちょうど良いと思った

けど

色々あったあの家で
ひとりで生活するのは、今の私には怖くて

……昔の事を
たくさん思い出しそうだったから



いつきさんは
自分が出ていくから
そのままいてくれていいって言ってくれた



『店で寝泊まりさせてもらうから
ひなたちゃんは、ここを使って』


『ここ、セキュリティはしっかりしてるし』


『ひとりじゃ怖いだろうから
姫達に来てもらえるようにお願いするよ』



私が安心して生活できるように
そんな風に言ってくれた

でも、いつきさんにも、姉さん達にも
これ以上迷惑かけたくなくて


でも、やっぱりひとりは怖くて


どうしたら…と途方にくれてた
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