たとえば、こんな人生も②
浮かべていた笑みを消して
静かに淡々と、れいかさんは話し出す
やるせなさと、小さな怒りをにじませながら
「元は、幸せな飼い猫だったでしょうに
人の都合で、たらい回しにされたあげくに虐待」
「劣悪な環境で、それでも長い時間
耐えて、耐えて耐えて、耐えながら生き続けた」
取り出したスマホから
見せられた写真は、保護した時のその猫の姿
毛は抜け落ちて、身体はがりがり
あちこち傷だらけで、片目と尻尾がなかった
見るに耐えないとはまさにこのこと
あまりに痛々しい姿に目を背けたくなる
続けて見せられた
保護施設での様子をおさめた動画では
人にひどく怯えていて
近付こうものなら
牙をむき出し、爪を尖らせ、うなり声を上げながら
全身で人を攻撃し
全身で人を拒絶していた
「自分を傷つけ、不幸にした『人間』を
信じられるわけがない」
「…」
「当たり前なのよ。そうなって当然」
「…」
「でもね。ひなた」
見せられる写真も
紡がれる言葉も
こうも心に刺さるのは
それは、その猫の話がまるで――…
「惜しみ無く、愛情を注げば
凍えた心を、溶かすことができるの」
「どれだけ時間がかかっても
癒すことができる」
「もう一度、相手を信じることができるの」
自信満々に、誇らしげに
一枚の写真を私に見せて、れいかさんは笑う
何があったか、直接は話してない
でも、きっと
この人は、見透かしてしまう
この人は、私の事を
守るべき猫達と同じように見ているから
そして
気付かせようとする
れいかさんの腕の中で
幸せそうに眠る
片目と尻尾のない綺麗な白猫の写真
「……はい」
写真の中のように
深い慈愛の眼差しを私に向けるれいかさん
涙を浮かべながら、頷いた
静かに淡々と、れいかさんは話し出す
やるせなさと、小さな怒りをにじませながら
「元は、幸せな飼い猫だったでしょうに
人の都合で、たらい回しにされたあげくに虐待」
「劣悪な環境で、それでも長い時間
耐えて、耐えて耐えて、耐えながら生き続けた」
取り出したスマホから
見せられた写真は、保護した時のその猫の姿
毛は抜け落ちて、身体はがりがり
あちこち傷だらけで、片目と尻尾がなかった
見るに耐えないとはまさにこのこと
あまりに痛々しい姿に目を背けたくなる
続けて見せられた
保護施設での様子をおさめた動画では
人にひどく怯えていて
近付こうものなら
牙をむき出し、爪を尖らせ、うなり声を上げながら
全身で人を攻撃し
全身で人を拒絶していた
「自分を傷つけ、不幸にした『人間』を
信じられるわけがない」
「…」
「当たり前なのよ。そうなって当然」
「…」
「でもね。ひなた」
見せられる写真も
紡がれる言葉も
こうも心に刺さるのは
それは、その猫の話がまるで――…
「惜しみ無く、愛情を注げば
凍えた心を、溶かすことができるの」
「どれだけ時間がかかっても
癒すことができる」
「もう一度、相手を信じることができるの」
自信満々に、誇らしげに
一枚の写真を私に見せて、れいかさんは笑う
何があったか、直接は話してない
でも、きっと
この人は、見透かしてしまう
この人は、私の事を
守るべき猫達と同じように見ているから
そして
気付かせようとする
れいかさんの腕の中で
幸せそうに眠る
片目と尻尾のない綺麗な白猫の写真
「……はい」
写真の中のように
深い慈愛の眼差しを私に向けるれいかさん
涙を浮かべながら、頷いた