たとえば、こんな人生も②
―――…




……。



オムライスを食べ終えた後も
変わらず過去を
いつきさんとの今までの事を
思い返していた私の前に、差し出されたカップ


「はい、どうぞ」

「…ありがとうございます」


いつきさんが用意してくれた
お茶を受け取って、お礼を言う


「あ、この間
オーナーにもらったお菓子があるんだ
美味しかったから、食べてみて
持ってくるから」


そう言って
再び、キッチンに戻ろうとするいつきさん

その服の裾をつかんで引き止める


「…ひなたちゃん?」


不思議そうに振り返り
私を見下ろすいつきさん

私は、そんないつきさんを
真正面からしっかり見据えて


想いを伝えた




「好きです」




「大好きです」




「…いつきさんが、大好きです」




何度も、繰り返し、好きを伝えた




「…」



いつきさんは、最初
目を見開いて固まっていた

しばらく茫然としていたけど

でも、徐々に顔を赤らめて




「…うん」



「ありがとう」



「俺も、好きだよ」




同じように「好き」を返してくれる

不意打ちに照れたように
でも、とても嬉しそうに
表情を綻ばせながら


だけど、その表情が段々と


困ったような笑顔に変わる



その理由は




「……それで、ひなたは何で泣くの?」



しゃがみこんだ、いつきさんが
ぽろぽろ涙を流す私に
目線を合わせて、優しく問う
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