たとえば、こんな人生も②
「い、いつきさん
あの、さっきはご―…」


戻ってきた様子のいつきさん
慌てて振り返り、謝ろうとしたけど

遮るように、いつきさんが言葉を発した



「これは
俺からのクリスマスプレゼント」

「…え?」


そう言ういつきさんは、なぜか跪いていて

言いながら

目の前に差し出された『それ』を見て


今度は私が固まった



「……本当は、ひなたが高校卒業したら
渡そうと思ってたんだけど…」



手にした小さな箱から
『それ』を取り出しながら

いつきさんは
困ったように、照れたように笑って
言葉を続ける



「きみが、あんな可愛いこと言うから
我慢できなくなった」



依然として、固まる私の左手を取って



「ひなた。俺と、結婚してくれる?」



乞(こ)うように、私を見上げて言う




薬指で光る、その綺麗な指輪は


将来の約束の証



……


…………


……………………。



長い時間、硬直していたけど
段々と、現状に思考が追い付いてきて


突然の愛の告白に


じわじわと顔が熱くなって
戸惑いなのか、恥ずかしさなのか
それとも、嬉しさなのか、瞳が潤む



「……返事、聞かせて?」



さっきの私みたいに
私の反応を楽しみながらも
いつきさんは答えを求める
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