たとえば、こんな人生も②
―――……


文化祭の準備が始まり
一気に慌ただしくなる校内

賑やかな声、忙しない足音が
あちこちで行き交う

ばたばたしつつも、楽しげな空気が漂う中
私はその空気に馴染む前に、学校を後にしようとしていた



イベント参加や、出店する他のクラスと違って
うちのクラスはやることがない
少ないというか、ほぼない

準備するのは看板だけ
後は、前日のセッティングのみ

看板も
去年、他で使っていた物を再利用するから
作らなくて大丈夫って言ってたし

前日の準備も、クラスの男の子達がやってくれることになった

だから、去年と比べると本当に全然楽
文化祭期間中だけど
通常通りにまっすぐバイトに行ける


あ、そうだ
バイト前に本屋に寄ろう
それから、スーパーで買い物して……


なんて、考えながら歩いていると



「捨てんの?」

「だって、手作りとかキモくね?」

「うわ、お前サイテー」


昇降口の近くのごみ箱の前で話す
男の子3人組が目に留まり
なんとなく、足を止める


「なんか入ってたらやだし」

「あー、確かに
そーゆーのあるらしいな」

「にしても、せめて外で捨てろよ」


言い合いながら、その場を後にする男の子達


「…」


男の子達が去っていくのを確認してから
私はそのごみ箱に近付いた

目に入ったのは、おそらくさっきの男の子が
捨てたであろうもの

それは、綺麗にラッピングされたお菓子だった

多分、誰かがあの男の子にあげたもの


じっと、それを見つめて
それから私は、すぐ傍の階段裏から
ちらりと覗いた人影に気付く
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