たとえば、こんな人生も②
おまけ
「…」


真顔で数秒固まる


自分の寝室のベッドの上で
丸くなって、眠っている女の子

俺のシャツを抱き締めながら、眠る姿に
なんとも言えない感情が湧く


………こういうことされると
困るんだよなぁ……


自分の顔を手で押さえながら
ふー…っと、ため息をついて

襲いそうになる衝動をこらえる


動揺と、若干の照れと、嬉しさと


目の前にいる、この子の存在が
可愛くて、愛しくて、たまらない


起こさないように、そっと
その傍に腰をおろせば
彼女の近くにいたくろが起き上がって
俺を見上げた


ひとさし指を口元に当てて笑えば
賢いこの子猫は
また、彼女のそばで丸くなり、目を閉じる


「…」


気持ち良さそうに眠っていたから
起こしたくなかったけど

あまりに可愛い姿に
触れたい衝動は抑えられなくて

そっと、その頬に触れてから髪を撫でる

少し身動(みじろ)ぎしたものの
彼女は熟睡してるみたいで
そのまま触れ続けても、目を覚まさない


無防備に

安心しきった様子で


その事が嬉しい


この子にとって、ここが
自分が、安らげる場所になっているなら
こんなに嬉しいことはない
< 70 / 72 >

この作品をシェア

pagetop