君にサヨナラを
~キーンコーンカーンコーン~

「皆さん2日間の文化祭お疲れ様でした。明日はお休みですのでゆっくり休んでくださいね。では、以上。」

ガタガタと音を立て皆教室を後にした。

「だぁー!!つっかれた!」

「お疲れ様、竜。」

「バカみたいに売れたな。思った以上に忙しすぎて超疲れた。」

「他の皆も竜と同じこと言ってたよ。」

「だよな。」

午後から戻ったがかなりの人が並んでいた。

全員バタバタしていた。

まぁ、俺は何も出来ないから見ているだけだったが。

「お、雨乃〜!おつー!」

なんて思い返しているうちに下駄箱まで来ていたようだ。

雨乃は、下駄箱にもたれながらこちらに手を振っていた。

「お疲れ様。絢音。」

翔は愛おしそうに頭を撫でた。

「おつかれ。あんたらのとこの先生、話長すぎじゃない?終わるの遅いんだけど。」

どうやら出てくるのが遅かったことにお怒りらしい。

「ごめんね。あ、ところで凛ちゃんは?見当たらないけど。」

そういえばさっきから居ないなぁ。

まだ終わってないのか?

ちらりと雨乃を見ると、少し困ったような悲しそうな表情で、倒れた、と呟いた。

は?

…たお…れた?

凛が?

倒れたって…言った…よな?

俺はいてもたっても居られなくなり学校を飛び出した。

3人は何かを言っていたが何も聞こえなかった。

凛のことで頭がいっぱいだったから。

俺は必死に走った。

まずは、凛の家へ行こう。

いなければ病院。

俺は頭の中でそう決め凛の家へ向かった。

-ピンポーン-

震える指でインターホンを押した。

すると少ししてガチャりと扉が開いた。

「ゆーくん?どうしたの?」

…凛。

「キャ!」

俺は思わず抱きついた。

「え、なに?どうしたの?寒いの?震えてるよ?」

「…よかっ…た。」

「へ?」

「雨乃が、凛が、倒れたって言うから…すげぇ心配だったんだよ。」

「あー、ごめんね!大丈夫だよ!泣かないでよ〜!」

「悪ぃ。」

凛から体を離して服で涙を拭った。

「せっかくだし私のお部屋で話さない?」

「あぁ。」

凛の言葉に甘えてお邪魔することにした。

「お前、親は?」

「まだ仕事だよ」

どうやら今日は帰りが遅いらしい。

凛は部屋に着くとベッドへ横になった。

「ごめんね。適当に座って。」

「体調まだ良くないのか?」

「うん。ちょっと体だるくて。多分寝不足だったから疲れが一気に来ちゃったんだと思う。」

「寝れてなかったのか?」

「うん。」

何も知らなかった。

何かあったのだろうか?

俺の頭の中は疑問だらけだった。

「なにかあったのか?」

少しの沈黙の後に凛が凄く小さな声で呟いた。

「…夢を見るの。ゆーくんがね、死んじゃう夢。」

俺は声が出なかった。

「死んじゃって、もう会えないって…ごめんなって…毎日…夢の中で…うっ…私に…ひくっ…言うの…だからね…」

泣きながら必死に伝えようとする凛を遮って抱きしまた。

強く、ぎゅっと抱きしめた。

「もういい。わかった。ごめんな、辛い思いさせて。」

「どうして?どうして、ゆーくんが謝るの?」

どうしてかなんて言えるわけない。

だから、俺はまた1つ嘘をつく。

「あー何となく?凛。俺はここにいるよ。ずっといる。だからさ、安心しろ。」

凛は小さくコクっと頷いた。

「ゆーくん…このままでもう1つ私の話聞いてくれる?」

「いいよ。」

凛は俺の胸に顔を埋めながらぽつりぽつりと話し出した。

「私ね、最近ずっと何かを忘れているよな気がするの。でも、何を忘れてるのか分からなくて…なんなんだろうね、これ。」

ドキリとした。

だか、平然を装って凛の頭を撫でた。

「なんなんだろうな。疲れてんじゃねぇの?」

そんなことを言って誤魔化した。

「そう、なのかな?」

「絶対そうだよ。」

「…う、ん…そうだね……。」

そう返事すると俺の腰に回していた腕がダラりと落ちた。

「凛?」

慌てて顔を覗くと吐息を立て気持ちよさそうに眠っていた。

寝たのかよ。

焦った。

俺はそっと凛をベッドに寝かした。

そして、凛の手を握った。

ごめんな。凛。

きっと終わりが近づいてる。

違和感はあったんだ。

俺が突然見えなくなったとき、もしかしたらって思ったんだ。

けど、凛の話を聞いて確信した。

終わりが近い。

凛はいつ思い出してしまうのだろうか?

いつ離れる時が来てしまうのだろうか?

あぁ…。やだな。

さよならしたくねぇな。

凛の傍に居てぇよ。

俺は静かに涙を流した。
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