君にサヨナラを
「優真、おっはよー!」

「おはよう、優真。」

俺はちらりと声のする方へ顔を向けた。

短髪で高身長イケメンな野崎竜(のざき りゅう)。

こちらも高身長イケメンで少し長めの髪を遊ばせている

クール系男子の畑野翔(はたの しょう)。

2人は高校に入ってから出来た俺の親友だ。

俺はニッコリ笑顔を向けた。

「おーい…なんか言えよ、ゆーま。」

竜は寂しそうな顔をして俺をつついた。

「竜、そんな顔すんな。」

翔は竜の肩をポンと叩いた。

竜はいつもの笑顔に戻り

「悪ぃ悪ぃ!」

といって笑った。

「おはよう。竜、翔ごめんな。」

俺はそう言って笑った。

最近はこんな感じで学校の一日が始まる。

休み時間は、俺の席に集まっていろんな話しをする。


「聞いてくれよー。
昨日さ、近所のダチとバイク乗って夜中まで遊んだんだけど、帰ったら母親に勉強しろー!ってすっげぇ怒られたんだけど。まじだりぃ…。」

どうやら竜は昨日夜遊びをしていたらしい。

「まぁ、もう高3だしね。
就職試験とかあるから余計だろうね。」

「翔は親に何も言われねぇの?」

「言われるよ。授業サボって遊んでるなら勉強しなさいってね。ま、聞く気ないけどね。」

「はは、だよな!優真も言われたことあんの?」

不意に問われ、あーそんなこともあったなと思い、

「すっげぇ言われたよ。」

ははっと俺は苦笑いした。

「そりゃあるっしょ。優真は喧嘩はめちゃくちゃするし、授業サボるし、よく学年上がれたもんだよ。」

翔はやれやれという顔をしていた。

「確かに…。そりゃ言われるよな。けど、途中からまぁまぁ大人しくなったよな。」

「そうだね。多分凛ちゃんのおかげだね。」

そうだ。

翔の言う通り俺は凛と出会ったおかげで少し

いや、随分と変わった気がする。

毎日していた喧嘩もしなくなり、授業もちゃんと受けるようになった。

喧嘩をして怪我をすると凛が悲しそうな顔をするから。

授業をサボれば凛が心配そうな顔をするから。

俺はそんな顔をさせたくなくて全てやめた。

「凛は俺の大切な女だからな。いつも笑ってて欲しんだよ。」

俺はそう言って笑った。

「…俺さ、本当は凛ちゃんのこと好きだったんだよな。」

竜はボソッと呟いた。

え?俺の聞き間違いか?

「あぁ、僕は知ってたよ。」

-キーンコーンカーンコーン-

「あ、チャイム!席戻ろうぜ!翔、今のは…忘れて。」

竜は急いで席に戻って行った。

翔は俺の方をチラッと見て席に着いた。

あいつ、凛のこと好きだったのか…。

俺は全然知らなかった。

翔は知っていたと言った。

一体いつから?

もし、竜にそのことを伝えられていたら俺はどうしてた?

凛を諦めた?

多分、いや絶対にそれは無い。

伝えられていたとしても俺は凛に告っていただろう。

それぐらい俺は凛に惚れているから。

今だって、そのことを知ったからといって

俺は凛を手放すつもりは無い。

俺は…だ。

凛は…凛はどうなのだろ。

今このタイミングで竜が好きだと、付き合って欲しいと、

そう、凛に告げたら…あいつはどうするのだろうか?

今すぐにでも俺を忘れてそっちへ行ってしまうのだろうか?

俺は不安と寂しい気持ちでいっぱいだった。

でも、分かっているんだ。

いつか必ず凛の手を離さないといけない日が来ることを。

俺は知っている。
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